プロレスラーと植樹。ちょっとユニークな組み合せである。昨年の4月29日みどりの日に仙台市北山にある輪王寺において、
一万本の植樹祭が開催された。この植樹祭をプロデュースしているのは輪王寺の日置副住職をメインとする緑を守る仲間たちだ。
新崎人生さん率いるみちのくプロレスもこの活動に賛同し、以前から植樹の苗を育てるなど輪王寺が推進する環境保護活動に協力。
植樹祭では境内にリングを組み、「植樹マン」なる新キャラクターも登場しチャリティ試合を行った。その後参加者全員で輪王寺山
上に48種類にも及ぶふるさとの木を一万本植えて爽快な汗を流した。新崎さんはこのイベントを通し、破壊や野蛮といったプロレスへ
のイメージを少しでも変えたいと願っている。なぜならプロレスは相手の技を避けて倒す他の格闘技と違い、相手の技をもろに受け、
それに耐え、持久力のある者が勝利するスポーツだから。試合を観て、こんな人生の戦い方もあると感じてもらえたらいい。落ち込
んでいる人には元気を、いじめられている子どもがいれば勇気を。単純にストレス解消だっていい。心がプラスに動いてくれるように
常に試合に臨んでいると言う。
四国は徳島の出身ということで、デビュー当時からリングへはお遍路姿で登場している。はじめは外観だけの姿であったが、
デビュー2年後からは実際にお遍路の旅に出るようになった。初めはたくさんの荷物を持って出発していたが、次第にいらないもの
まで背負って旅していることに気づく。そして不必要なものを次々と家に送り返していくうちに、必要最小限の持ちもので旅をするようにな
った。人生も、いろいろ抱え込んで生きているが、時には捨てる勇気も大切なのだと身をもって学ぶことになる。ただし後で気づくのだが、
捨てたものが本当にムダなものだったかというと、さにあらず。すべて自分の力となっているから不思議なのだと話す。
昨年7月に新しい女子プロレス団体『センダイガールズプロレスリング』を立ち上げたばかり。きっかけとなったのは、やはり昨年の
4月に解散した女子プロ団体の元選手、里村明衣子選手との出会い。里村さんはアジャコングら有力選手を破ってタイトルを手にしたこ
ともあるクオリティの高い選手で、ぜひもう一度リングに上げたいと思った。新団体のコンセプトは、グローバルとローカルを合わせた
「グローカル」。女子プロレスをもっとメジャーなスポーツにして地域から世界に発信したいという意気込みが伝わってくる。今年の7月に
は旗上げ戦を予定し、将来的には仙台を中心に常設の会場を設け、週に一度のペースで試合をやっていきたいと言う。何かを表現したいひとで
あれば一から鍛えてゆくので、希望者にはぜひ門をたたいて欲しいとも語る。
リングネームの新崎人生は、役者をめざして修行していた頃、菅原文太一門の兄貴的存在だった俳優の宇梶剛士さんが命名してくれたものだ。
自らの人生を振り返ると、自分の努力で切り開いてきたというより、いつも”縁“に恵まれ、助けられて生かされてきた感じがするのだとか。
どんな時でも熱い夢を持ち続け、何ごとにも真剣に取り組む新崎さんの姿勢が人の心を打ち、共鳴するからに違いない。最近とくに仙台の人々
との良き縁に恵まれ、導いてもらっているような気がします、との言葉を残してくれた。
インタビュー/石川恵美子 カメラ/大沼英樹